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23/09/20

校長 古田茂樹の「英語遊話」(2023年10月号)

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英語が話せるようになるには…

TEC予備校の経営活動に加えて、外部では2つの団体に所属していた。一つは経済団体であり、二つ目は世界的に組織されている米国に本部のある社交団体である。
社交団体の方は世界中から老若男女がやって来る。目的は様々で、若者の短期留学や文化交流であったり、専門分野における自国と日本の比較調査であったりする。ここから派生して、踊りのバレーの認定試験の通訳も務めた。英国ロイヤルバレー団の偉い人(女性)がよく来たことを覚えている。但し国籍は英国に限らず、カナダや米国、ニュージーランドからもやってきた。
社交団体には喋りの好きな人がたくさん在籍していたが、外国人相手の英語となると途端に静かになってしまう。むしろ日本語で寡黙な方が、とつとつとではあるが英語で話してみようとする傾向がある。外国人の迎え入れ準備や案内途中に彼らの社内オーディオから偶然英語が鳴り響いたり、英会話の本が後部ドアのポケットにそっと入れてあったりする。これらの発見から、彼らが英語を陰で学んでいたのが分かった。所属団体に限らず、日本人の「英語を話せるようになりたい」願望は広く深く浸透しているのが分かる。その後、外国人の前では英語を頑なに拒む人物が仲間を集め外国人講師を雇い自宅で頑張っていたことが判明したときには思わず笑ってしまった。
さて、英語が話せるようになるにはどうしたらよいだろうか。二つのポイントにまとめたい。一つは英語を話すという自意識を弱めることである。自分の英語力を確かめるのではない。また、周りに自分の英語力を見せるのでもない。相手のためになることにマインドを集中したい。二つ目に英語で話す目的をしっかり自覚することである。例えば、衣類の購入を手助けする。眼科受診に付き添う。霊山寺で八十八か所巡りの衣装や準備を手伝う。徳島の海釣りに案内する。和食の調理を教える。……等などである。以上のような場面をうまく捌くには、英語力もさることながら、その内容の知識や情報やそこに登場する事物の英単語が欠かせない。実技が伴うなら、手さばきも事前練習が必要である。このあたりはYouTubeを代表とするSNSがとても役立つと思う。
先月、とても懐かしいTEC卒業生の来訪を受けた。「のぶこさん」という女性である。彼女は長年カナダのオンタリオ州にカナダ人の夫と高校生と中学生の子供と暮らしている。コロナ禍のせいで徳島市への実家へは四年ぶりの帰省である。夫は仕事が忙しく同行出来なかったが子供たちは一緒に帰ってきた。99%カナダ仕込みの日本語であるが、子供たちは日本のおばあちゃんや親戚の人たちと十分コミュニケーションできているという。「それは大したもんですね」と私が目を丸くして驚嘆の表情を示すと、彼女は「それは私の意地です。譲れません、譲りませんでした。半分は日本人ですから」ときっぱり言い切った。子供たちの日本語は大抵のシーンで立派に通じたが、おじいちゃんの強烈な阿波弁には一苦労があったと笑いながら詳細を説明してくれた。でも、微笑ましい話しだ。
「英語が話せるようになるには、どうしたらいいですか」という問いはここ徳島で何回耳にしたか分からない。つい先日も娘さんがカナダ人と結婚してバンクーバーで暮らしているという知人夫婦から同様の相談を受けた。「まだ子供はいないけれど、孫が生まれたら簡単なことでもいいから英語で話したいなぁ…」と二人は目を細める。私は、自分はまだ仕事があるので直接英語を教えられませんが、時折のアドバイスくらいなら喜んでいたします、と提案した。「それは、助かります」と嬉しそうな声が返ってきた。
英語に関して、私には強い願望がある。それは、日本人のもっと多くの人が英語を使いこなしてほしいのである。インバウンドで日本に来た外国人は日本の印象を私たちに語りたいのである。彼らの声を聞いてほしいのである。彼らの話を十分聞いたら、今度は私たちの想いを彼らに伝えて母国に持ち帰ってほしいのである。
私たち日本は世界を相手に覇権を示すのは似つかわしくない。基本的に小さな島国である。相手を威圧・支配するような国民性でもない。世界から好かれて慕われる国として生きるのが相応しいように思える。 (終)

2023年10月号 2023年9月20日 発行

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