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25/04/10

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第32回】「快適な夏は湿度管理だ!」

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 車には車内から熱を逃がす装置がついている。実は三つ備わっている。一つはエンジン内部を冷やすラジエーターである。エンジンの正常で効率的運転には適切な温度維持が求められる。二つ目以降は紙幅の関係で別の機会に触れたい。
 人間の体にも体内の熱を発散するラジエーターがついている。99%水の無味無臭の汗はほぼ全身に張り巡らされたエクリン腺から発散される。このような汗腺を備えているのは馬と人間だけである。人間も猿の時代は汗腺が無かったが、進化の過程で長時間運動にも耐えられるように冷却機能を発達させた。よく鍛えられた運動選手の汗腺は上手に汗を出すように機能アップしている。車と同じく、汗による放熱と体内での発熱がバランスしていると体調も良くなる。
 汗腺からの汗(水分99%)が出ると外気に触れて蒸発する。水が液体から気体になる時は身体から熱を奪うので体表はひんやりと涼しくなる。応じて体内も涼しくなる。汗がスムーズに出る、すぐに気化して涼しくなる、この過程が順調だと体調もよくなる。
 ここまで来ると、車も人間も適度な冷却が欠かせないことが分かった。私の幼少時代は最初に団扇、そして扇風機が到来した。扇風機の風は室温に過ぎない温度であるが、皮膚上にある汗腺から出た汗がすでに気体であれば、それを吹き飛ばして次の汗が出やすくしてくれる。もちろん、汗がまだ液体であれば体表面に当たる風が素早く気化してくれる。気化は熱を奪うので皮膚表面が涼しくなる。表面の涼しさは深部、体内へと伝わっていく。
 では、エアコンはどうであろうか。こちらは自然室温を遥かに下回る冷風を作ってくれる。冷風が肌を直接冷却すると同時に、気化熱も奪ってくれる。扇風機の風よりも湿度が格段に低い風なので皮膚上の湿気(汗)を素早く気化してくれる。扇風機もエアコンも基本的には同じ作用であるが、エアコン風は温度と湿度が格段に低い。総合冷却パワーが断然違う。ただし、消費電力も桁違いである。
 エアコンの持ち味は低温と低湿である。実は、涼味を与えるには低湿度がより鍵となるのだ。空気は常に一定量の水分を含んでいる。温度が上がると含むことのできる湿度が二次関数的に上がる。だから湿度の高い高温が一番厄介である―日本の夏の特徴は高温・多湿である。若いころ真夏にピラミッドを観にエジプトへ行った。気温は優に40度超えだが、乾燥した空気は汗をすぐに気化するので余り不快感はない。
 手ごわいのは湿度だ。昼間エアコンをガンガンかけていて、夕方になって陽が落ちたから、止めて窓を開け放つのは駄目だ。大量の湿気がなだれ込んでくる。電気代が気になっても、外が少し暗くなり、外気も低温・低湿になるのを待つのが快適な夕べの秘訣である。 (終)

2024年8月15日 発行

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