
現在の日本の家庭は大半が核家族で、人口は2~4人である。家族に関する決め事は夕食後食卓で全員で話し合って決める。ちなみに、家庭での消費行動、つまり金の使い方についての話し合いは、時に激しくヒートアップすることがある。これを直接民主主義という。しかし、日本の国は1億2435万人(令和6年10月1日)と、人口が多い。一か所に集まって話し合い、決め事をするのは物理的に無理である。なので、地域ごとに代議員を決めて、これら住民の代表者が国会に集まり話し合って国の方針を決める。
今回終わったばかりの衆議院選は我ら地域の代表者を選ぶ選挙である。しかし、今回の選挙の投票率は53.8%に過ぎない。国民の二人に一人は「もうどうでもいいや、勝手にやってくれ」の態度である。私たちの税金、社会保険、教育制度、医療制度、はては同盟国(米国)との付き合い方や近隣の危険な国々との距離感の取り方など重要事案が盛り沢山である。「勝手にやってくれ」でいいのだろうか。将来ことによると、TEC予備校の生徒たちが戦場に赴く徴兵制度が国会で決まるかもしれない。
筆者の孫も徴兵されるかもしれない。厳しいことだが、国を守るには止む無しと覚悟するには、日ごろから政治の動向には目が離せない。特に、私たちの損得どころか運命を左右する代表者選びの選挙には棄権などできない。
内閣総理大臣には衆議院を解散する権限が憲法で付与されている。普通、降って湧いたような寝耳に水の解散はない。少なくとも半年前くらいからは国会周辺で、メディアで、また巷で囁かれるようになる。選挙に出そうな顔ぶれのポスターがたくさん張られる。大半は見慣れた顔ぶれであるが、ぽつぽつと新顔も出てくる。
メディアもよくチェックしているが、巷の政党関係者やその知人からの情報も貴重である。半年前のある会合で、選挙好きの知人が前の知事のIさんが次の選挙に出るとの情報を聞いた。「この前の知事選の負け方では一区(徳島市及び南の地域)では無理でしよう」と水を向けると、彼は「ほれは、分かっとる。はなけん、二区(北と西部地域)を狙うんじゃ」と断言した。「明日は関係者が集まって作戦会議じゃ」と付け足した。
一区では最大野党のR党からかつての大物政治家の孫が出るらしい。ポスターがジャンジャン張ってあるので間違いない。裏金問題で揺れている与党のJ党は議席を減らすのは見えている。衆議院選は小選挙区と比例区の並列制である。大物の孫は小選挙区(定員はすべて一名)では現職のNさんには勝てまい。重複立候補はルール上可能なので彼は比例区で返り咲く作戦だな。
所は変わり、選挙中に大型ショッピングセンターから買い物袋を下げて出てくると、中道保守のI党の街宣車が見え、候補者の旗が何本も立っている。自車に向かっていると候補者に呼び止められた。小柄な女性である。偶然であるが彼女は徳島で活躍する人たちにインタビューするラジオ番組をやっていて、筆者もよく聞いている。このことを言及すると満面笑みになり会話が始まった。「小選挙区はさておき、比例はいけるでしょう」と励ますと、彼女と支援幹部らしき男性が口を揃えて、今回は難しいんですと顔を曇らせた。応援したくなったが、一票入れますとは言えなかった。
実は、選挙情勢を大体掴んでいる筆者は、与党のJ党は裏金問題などで入れたくなかったが、徳島県のことを考え小選挙区は与党現職のNさんに決めていた。比例区は中道保守で隣県のT代表が党首を務めるK党に決めていた。比例区は党名で投票する。彼は誠実な人柄と頭の良さで推しの政治家である。
これを書いている選挙翌日の28日、早朝にネットで結果を確認した。予想通り与党Jは大きく議席を減らせた。減らせた票はR党と推しのK党に流れていた。好きな党首は議席4倍で満面笑みの会見写真が出ていた。ところで、I党の女性は比例でも復活できなかった。党の得票が振るわず、議席数が確保できなかったからである。悲しい。 (終)
2024年11月7日 発行