18/03/01

校長 古田茂樹の「英語遊話」(2017年3月号)

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アンディの八十八ヵ所遍路旅

アンディは室戸岬最南端の最御崎寺を目指していた。一人で全遍路旅を歩き通すことは故郷のメルボルン出発の時に決めていた。ひとりで心静かに一歩一歩歩き、宇宙を構成している空、風、火、水、地と十分交流したかったのである。大学三年間(彼の地では大学は3年制)街のレストランでシェフの助手として働き資金を貯めながら遍路旅への構想を練ったのである。
2017年の2月中旬の小春日和の日差しのなか、私たち一行と海陽町で出会った。すでに遍路の風格が備わっていた。細面な顔に口ひげ顎ひげを蓄えた気さくで人懐っこい白人青年である。日本語は1月20日に東京に着いてから旅をしながら覚えたに過ぎないという割には私たちの日本語を理解するのに正直驚いた。英語リスニングに苦労する日本人からは羨ましい。
大学ではヨーロッパの歴史を専攻した。権力の興亡に沿って発生する経済や文化的事象を体系的に学べたのはよかったが、人間と宇宙、自然、神々なるものとの関わりについてはうかがう機会もなく物足りなかったという。この想いが日本の八十八かヵ所巡礼の旅や自国の原住民アボリジニの文化に興味を抱くようになったという。
「この地域の海岸沿いの景色はオーストラリアそっくりですね」と会話が重くなりすぎず、軽くなりすぎず、身近な事柄や感想から、自分が渇きを覚えている人間や宇宙との関わりへの精神性まで切り替えていく会話術はさすが英語圏の住民である。この辺りの切り替えの巧みさは私たち日本人が英語と合わせて身に着けたいコミュニケーション力である。
「日本人はとても魅力的です。日本も素晴らしいです。遍路巡礼の伝統があり、超高速で世界一安全な新幹線もあります。世界にもっと日本のこと教えてください」と真顔で告げ、にこやかに握手してアンディは次の24番札所へと歩を進めた。
「そうか、世界は日本を知りたがっているのか! ならば自国のことをもっと知らねば、もっと伝わる英語を教えねば」、と痛感した。

2017年3月号 2017年2月21日 発行

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