MENU
21/07/16

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第1回】「クルマの運転はスキーの滑りだ」

ページメニュー

アーカイブ

車窓余禄タイトル

 本稿を書いている日はとても寒い。シベリア寒気団が南へせり出してきて日本列島を覆っている。徳島でさえ最低気温セ氏1度を記録している。当然北国は突然の大雪である。タイヤを雪使用に間に合わなかった多くの乗用車やトラックが道路外へ滑り落ちたり、立ち往生したりしている。政府のトラベルキャンペーンに勢いよく乗っかってサマータイヤのまま新潟へ乗り込み散々な目に遭った人々もテレビで目にした。大変だ。
 突然のシベリア寒気団による大雪も明暗が分かれる。交通が「暗」とすれば、雪不足に泣いていたスキー場は「明」である。人工降雪機などお呼びでない大雪はスキー場にとってまさに救いの神である。でも、影を落とすのはコロナである。大手を振って到来する客を、もろ手を挙げて歓迎するのは多少気が引ける。でも、頑張ってほしい。
 話を車に向けると、スキーと車の運転は似ている。スキーの回転は外側のスキー板で求心力を作ってターンする。雪をしっかり外へ押しやる外板とは反対に内側のスキーは余り力を掛けないように浮かし気味が丁度よい。車は回転外側のタイヤに荷重がかかる。自ずと内側のタイヤは浮き気味になる。スキーなら内側板を浮かせてしまっても、外スキー板が仕事をしていると問題ない。しかし前後長さがある上4輪の車は問題がある。一気に不安定化して事故につながる。
 遠心力という言葉は向きが違うだけで求心力と同じである。外へ押し出されると感じたら遠心力と呼び、それに抗して内側に押しこめる力を求心力と呼ぶ。感じ方、向きの捉え方の違いであって現象は力の大きさも含めて同じである。この力が厄介である。F=m×ω2×r(F:力、m:質量、ω:角速度、r:回転半径)で示される。質量や回転半径には一次比例だが、回転速度には二乗で比例する。スキーヤーは回転で転び、クルマはコーナーで事故を起こしやすいのはこのためである。スキーでは外板で雪を外へ押し出して回り、クルマは外タイヤで路面を外へ押し出して回るのである。
 一般のドライバーはそこまで考えなくても、ハンドルを切ればクルマは回ると思っている。その通りである。ただし、一定の速度までは、の話である。うっかりスピードが出過ぎていて、回転速度が大きくなると事情は様変わりする。加えてカーブの半径もきついとさらに危ない。先述した通り、半径は一次比例で済むが、回転速度は二乗比例で求心力(=遠心力)を大きくする。
 先々月号でも少し書いたが、軽自動車がカーブでセンターラインをはみ出して大型トラックと正面衝突した事故に遭遇した。誠に悲惨な限りである。後日、新聞で死亡した軽自動車の運転者の身体からアルコールが検出されたと報じていた。同じように、スキー場でも飲酒事故は起きているらしい。一応スキー場ゲレンデは飲酒運転禁止ではないようである。しかし、スキー場レストランで「飲酒スキーは危険です」との警告ポスターを見かけたことがある。スキー場で一人転ぶのも多少危険ではあるが、他のスキーヤーを巻き込む衝突事故はとても危険である。互いにおおきなスピードが出ているからである。
 田舎の方へ友とツーリングに出かけると、道に慣れているせいもあり惚れ惚れするほど鮮やかにヒラリヒラリとコーナーを駆け抜ける地元の車に出会うことがある。別にスポーツカーなどではなく普通の生活車である。でも、上手いのである。この人、スポーツカーなど乗ると上手いだろうなとか、スキーも上達が早いだろうなと想像を巡らせる。
 本人の自覚とは別に才能豊かな人はどこかにいる。彼・彼女にも車やスキーにチャレンジしてほしい。ゲレンデの方は絶好調である。(終)

2020年12月19日 発行  TEC TIMES 1月号より

TEC予備校へのお問い合わせ

お電話にて

メールフォームへ(24時間受け付けております)

お問い合わせ 時間割や料金がわかる資料を無料でお送りします。