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21/07/16

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第4回】「ⅠTと格闘する今日この頃もまた楽し」

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 ITは永年苦手であった。だから、パソコンやスマホは使いながらも腰が引けていた。だから当然、進歩しない。苦手なことは使うのが嫌なだけでなく、話題にするのも嫌である。何とかせねばと思いながらも逃げてきた。時間があっても慣れた好きなことに気が向く。
 しかし、時代は待ってくれない。職場の会議でも不便を感じ出した。経済団体の会議でもメンバーは若い世代が多くなり、着席するなり持参のノートパソコンを立ち上げている。(一応私も所有しているが、苦手意識から携帯していくのにやけに重みを感じてしまう。だから、スマホだけもって出かける。)
 コンビニや外食に行くと、若い人はスマホを読み取り機にかざしてスマートに支払っている。のちに、あれは「オンライン決済サービス」というものだと分かった。よく耳にする“ペイペイ”はヤフーとソフトバンクが提供するサービスだとも知った。財布からコインを取り出している自分は確実に時代に遅れていることをヒシヒシと感じた。「もうこれ以上四の五の言っていられない」と否応なく観念した。
 まずもって、ITに飛び込む前になぜ苦手意識をもつのか自己分析してみた。5つ原因があった。(1)機械類のオンオフや設定替えはレバーやダイヤルで手応えを感じながら操作するという昭和感覚がしみ込んでいる。画面は見るものであって、ここで操作できることが不思議だ。(2)ITではアカウント入力に始まり次々に操作が連なる。どこかで行き詰る恐怖がある。さらに、会社のことだと情報漏洩や思わぬ課金がされることへの恐れがある。(3)社内では職位が一番上なので、スタッフにやらせたり呼んで教えてもらったりできる環境にある。早い話、甘えの環境である。(4)子供のころより手先より口先が器用な方である。(5)ラインやグーグルに情報を取られる、とよく人から警告されるので警戒心が募る。
 ところで、今は前記の5つのハードルを乗り越えてⅠTと格闘と奮闘する毎日である。読者の方々に参考になるかどうかは自信ないが、自前の克服経験を話してみたい。箇条書き順位番号は直前の段落での番号に準じている。(1)画面は見るだけでなく操作も受け付けるのだ、と何回も言い聞かせた。声に出して言い聞かせた。(2)行き詰まりや思わぬ課金への恐怖への対応は、丁寧な確認と勇気を出して前進するのである。地味な忍耐である。(3)教えてもらえる甘えからの脱却は以外にも外からやってきた。米国で勤務していた息子が経営に加わり、私のIT怠慢に遠慮なく苦言を呈したのである。彼の母、つまり私の連れ合いにまで苦言は届いていた。(4)口先に器用さで専門の英語は日本人らしくない格段のスピードで上達できた。語彙も文法も速かった。なので、IT習得を外国語習得とみなしたのである。これがとてつもない自信になった。この気づきと時を同じくして経済団体の親しい若手から「苦手と言いますが、その気になれば早いでしょう」と有り難い励ましをもらったのが効いた(5)情報を抜かれるのは痛しかゆしで仕方がないと腹を括った。警戒も大切だが、し過ぎると時代に乗れない。
 以来、役所などに行って公文書を待っている間にも、各アプリの設定を開いて試している。このように「習うより、慣れろ」との真理を痛感する毎日である。ITに慣れてきた。ITに自信が湧いてきた。少し好きになってきたような気がする。気のせいであろうか?
 苦手と言いながらも、好きな自動車関連はITのお蔭で大分国際的に楽しんできた。ユーチューブでは世界のサーキットや有名なコースは随分とヴァーチャル体験できた。画面直下のコメント欄では世界の人たちと交流している。いつか彼の国に彼らを訪ねて一緒に走りたい。日本にも呼びたい。商売よりも、まじめな文化交流よりも心が解放された遊びの方が交流は楽しくなる。得意の英語、好きなクルマ、そして苦手克服のITの3本矢を駆使して世界と遊んでやろうと心躍らせている。
 クルマは上手に運転すると楽しくなるが、自分の人生も運転次第で楽しくなることをもっともっと実践してみたい。なにかワクワクしてきた。(終)

2021年3月20日 発行  TEC TIMES 4月号より

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