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22/01/20

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第13回】「見習いたいな! 車の楽しみ方が上手な徳島の二人の友」

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 A氏は最近金融機関を定年退職して、別の会社へ移った。与えられた旧い国産車を早速、内外丁寧に洗車清掃して、時間を見つけて整備にも勤しみたいと張り切っている。単なる移動の手段ではなく仕事の相棒と見做している。こんな車への接し方は見ていてとても微笑ましい。彼は国産・輸入車取り交ぜて複数所有しているが、一番気に入っているのがRX8という日本のマツダが最後に売り出したロータリーエンジン車である。螺子(ネジ)を回しこむような気持ち良い加速感覚がたまらない。ロータリーエンジンは軽量かつ低重心なのでコーナーでの曲がりが得意である。
 A氏は運転がうまい。好きだから、よく乗るから、うまくなったとも言えるが、生まれつきの才能に恵まれている。うらやましい。「運転の才能って何なの?」とよく聞かれるが、私はまず、スピード感だと確信している。「スピード感」とは目で受けた視覚情報を脳で処理して落ち着いてそのスピードになじむことである。概して、男女でいうと男性の方がスピード感は優れている。スピード感の弱い人は、車に乗せると大した速度でもないのに、むやみに怖がるからすぐ分かる。彼は、初めての車でも短時間で特性を掴み慣れるのがとても早い。そして、その車の特性を掴み、説明するのもうまい。勉強好きと車好きと喋り好きが三拍子揃った人物である。
 次はB氏である。彼は私も所属しているクラブの会長である。彼は、英語の常套句ノーカー・ノーライフ(車がなければ、生きる意味がない)を地で行く人物である。何よりもクルマが好きである。メカにもめっぽう強い。大勢でのツーリング中に不調な車が出るとすぐさま原因を突き止め解決してしまう。運転もうまい。彼の美点は、SNSライン登録で100名を超す会員をまとめる力である。「この会にはルールは一つ、参加車輛は輸入車であることだけです。ほかに難しいルール一つもありません。ぬるーく、ゆるーい会です。」と入会希望者に説明している。実際はどうなのと、と聞かれれば説明通りですと胸を張って答えられる。
 B氏は文化組織を誠に巧みに運営している。彼には私利私欲がない。車が好きなので、好きなことを共有する仲間が欲しいという純粋さで動いている。20年以上会は続いているが会員数も増えている。楽しい会なので、もっと催しをやってほしいとの要望が引きをきらない。実際、コロナ禍で思うように活動ができなくメンバーはウズウズしている。参加メンバーは「ぬるーく、ゆるい雰囲気」を堪能しているが、会長のB氏は気も使うし頭も使っている。手間や段取りや連絡に多くの時間を割いている。「会長、大変ですね」といっても、好きなことだからちっとも苦にならないと笑っている。でも、自分も少しだけ手伝うこともある。私にとって、ありがたい人物であり、好きな人物でもある。
 一度しかない人生、好きな物事に熱中できて、共感できる仲間に恵まれることは最高の人生かなと感じている。だから、気分良く仕事ができる、世のためにも尽くせる。(終)

2022年1月20日 発行  TEC TIMES 2月号より

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