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22/09/20

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第17回】「地震、猛烈台風、戦争、食糧難に怯えている。」

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 ある有名なお寺の住職から有難い法話を聞く機会があった。「人間には常に三つの心配が付きまとう。健康、金、人間関係の三つである」と語る。至極当たり前な内容であるが、ご本尊のおおきな像をバックに立派な紫の袈裟をまとっているお坊さんから抹香臭い本堂で聞くとなぜか有難味が増すように感じる。
 でも、私には常在の三つの心配以外にも、心に付きまとう別の心配がある。表題に掲げた「地震、猛烈台風、戦争、食糧難」の四つである。
 一番目の地震とは、プレートの滑り込みのエネルギーの解放である。地球の成り立ちから起きる不可避の現象である。来ることは間違いない。問題はいつか?である。海抜が低く、地盤が緩い徳島市は大被害から免れない。
 二番目の猛烈台風は毎年やって来る。地球温暖化に伴い日本列島近海の海水温度は高止まりしている。遥か南で発生した台風は始めは小粒でも暖かい海水からエネルギーを充てんしながら北上してくる。
 三つ目の戦争は、ウクライナ戦争がどこの国にも「戦争の現実」をもたらしている。こちらから仕掛けなくても、突然侵攻してくる相手がいる。相手への憎しみ、利害衝突、領土拡張欲がなくても、自国内の矛盾や問題から国民の目をそらすために隣国へ喧嘩を吹っ掛ける場合さえある。
 四つ目の食糧難であるが、まもなく80億人に達する世界人口の中で、飢餓人口は8億から9億と言われている。干ばつ、自然災害が大きな要因だ。日本も必ず食糧難に直面すると(不謹慎と言われても)確信している。日本の食料自給率は38%(カロリーベース 農水省発表)と言われている。作物を育てる輸入肥料や家畜に与える輸入飼料を計算に入れると自給率はさらに下がる。因みに米国、カナダ、フランスの自給率は100%超である。日本は専業農家の平均年齢70歳であるが、彼の国々では若い人も農業をやっている。
 実は、私はこの四つ目の食糧難が最大の心配だ。あの山岳国家のスイスなどは農業生産に大きな補助金をつけている。農業生産を、経済活動を超えた食料安全保障問題と捉えての政策だ。「うちは農家だから大丈夫、徳島県は農業県だから大丈夫」などとのんびりしていたら痛い目にあう。食糧難になれば窃盗団が押し寄せる。「命守りますか、大根守りますか」の選択になる。戦後の食糧難で証明済だ。
 「そんな大事はエライ人が考えてくれるん違うで?」などと更に他人事のようにうそぶく人もいる。自分で考えるのを面倒くさがり、同時に真剣に考える人を馬鹿にしている。でも考えている人もいる。今回の余禄を書くにあたりSNSで多くの人に意見を求めた。マクロ的に国際情勢から日本の食糧危機へ至る道筋を説いてくれた人物もいる。本文でも引用させてもらった。まだまだ、日本のこと、日本人のことを考える人がいる。安心した。
 ところで、エライ人であるが、彼らが頼りにならないから困っているのだ。テレビの主要ネットワークほど大事なことを取り上げていない。大事なことを国民に知らせないようにどうでもよいことを懇切丁寧にきれいなセットから美男美女が報じている。
 安倍元首相も国葬より、事件の真相究明が先だろう。主要新聞、テレビはダンマリを決め込んでいる。この現象がもっとも怖い。 (終)

 

2022年9月20日 発行  TEC TIMES 10月号より

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