徳島県の今年元旦の人口推計が発表された。701,962人である。自然減(出生と死亡)と社会減(転入と転出)で年間八千人ずつ減っているので、来年は、70万人割れは必至である。私たち塾・予備校業界の指標として、年度ごとの高校1年生人数を注視している。10年近く前、2015年に高校1年生が初めて七千人を割って六千八百人となった。その時、2025年を人口データから推計すると、なんと五千五百人まで減ることが判明した。思わず目を閉じてうなだれた。そして、その2025年は目と鼻の先となった。成長どころか、現状維持に必至である。
古今東西、人口が減って栄えた国や地域はない。正攻法の人口増は子育て支援を手厚くすることであるが、なにせ赤ちゃんが生産人口になるには時間がかかる。なので、各国の採用している即効性のある政策は「移民奨励」である。欧米の街角写真をみてもスポーツ番組をみても移民の子供たちが大活躍である。日本とて、例外ではない。米国バスケNBAで活躍する八村塁、テニス界の大坂なおみは紛れもなく日本人である。他にも相撲界を筆頭に、外国人の血の入ったスポーツ選手は多い。わたしには何の異論もない。
場面を変える。週末になり愛車のスポーツカーを走らせていると、知人の地方議員に出くわした。四方山話から入ったが、当然のように四月の統一地方選の話題となった。彼は改選のない自治体の議員であったので、態度には余裕がみられた。二人の意見が一致したのは「政治家も一般人も徳島県の立て直しに本気の本気で取り組まないと大変なことになるぞっ……!」であった。人口減・少子高齢化はいの一番の大課題であるので、子育ての支援に手を打ったうえで、やはり即効性のある移民奨励にも躊躇していられない、との話になった。文化、宗教、価値観が大いに異なる移民とわたしたち先住民との摩擦は避けては通れないが、これはこれで手を打ちながらの移民奨励である。大きな声では言えないが、治安の悪化は避けられない(かもしれない)…。
話題がだんだんと、核心に入っていった。市町村長や議員も大事だが、やはり予算の大きさや人事権の幅からして、県知事に誰がなるかが最大の課題だ。Aさんはどうだ?「う~ん、悪い人じゃないけど、流されて言いなりになりそうだな」。Bさんはどうだ?「やんちゃな人物だな。でもイチかバチか爆弾投げ込むつもりでやらせてみるか」。Cさんはどうだ?「県民の人心だけでなく役所で働く人の人心が…掴めるかな」Dさんは?「ちょっと出遅れたかも」。この紙面では詳しくは書けないが、大分踏み込んだ会話となった。
政治のことは関心をもっている。家でも連れ合いと選挙リーフレットに始まり関連新聞記事や選挙公報は選挙ごとに資料をまとめて保存している。特定の政党や政治家を推してはいないが、選挙ごとにどの党がいいか、どの候補者がいいか自分なりに真面目に吟味しているつもりである。政治に、選挙に無関心でいるのは自由かもしれないが、私たちは誰一人として無影響ではいられない。本心では、予備校の先生たちや生徒・保護者の方々にも政治・選挙の重要性を訴えたいがまだ実行できていない。この点に関しては反省と無念さが募る。真面目過ぎるのかもしれないが、日本のこと、徳島のことをとても心配している。
議員の方とは、力合わせて徳島を元気にしような、と誓い合って別れた。誓いの清々しさと課題の重さの二つに揺れながら、ルーフを開けて空いた農道をひらりひらりと駆け抜けた。すこし気分が晴れた。
その夜、仲良しの友とラインでトークした。政治のこと、選挙のことを心配していると話すと、「教育が無関心を作り、それを政治が巧みに利用しているんだ」と指摘した。寝つきが悪くなりそうな発言を聞いてしまった。 (終)
2023年2月20日 発行 TEC TIMES 2023年3月号より