MENU
25/05/13

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第50回】「本気でカレーを作ってみた…」

ページメニュー

アーカイブ

車窓余禄タイトル

 生まれつき美味しいものが好きだ。美味しいものは美味しいから好きだという理由以上に、料理人の才能や美味しいものを食べさせたいとの本気の執念を感じるからである。
  幼少の頃、親戚の家に行くと優しい叔母さんがうどんを作っていた。当時、どの家も大家族時代なので、親戚まで大挙して集まると20人以上の食事を用意するなど珍しいことではなかった。彼女はタスキがけをして小麦粉を練り、フーフー言いながら麺を捏ねていた姿を今でも覚えている。全過程までは覚えていないが彼女が捏ねてから、まな板上で細切りにした麺を大鍋に投入していたことを斜め右後ろからの角度から鮮明に記憶している。鍋から盛大に湯気が立ち上っている様子も目に焼き付いている。作業が大変なのに、待っている子供たちに「美味しいうどん作るけん待っといてよ―」と場の雰囲気を和ませる気遣いまで見せていた。彼女のことが好きであると同時に尊敬の心が湧いてきた。
  予想通り、うどんは美味であった。ほおばる口内だけでなく、鼻から吸い込む汁の湯気の温度と匂いまで美味しかった。全身全霊で味わった。マジで。
  5年位前からであるが、やっと本当の意味で料理に着手し始めた。最初の料理は「豚の生姜焼き」であった。まずまずの出来であった。が、料理は自分にはある程度向いているとの直感があった。職場や経済団体での歓談で料理を始めたことを明かす自信も芽生えてきた。うん、このまま料理にはまっていけるとの確信を得た。
  そして、満を持して「本気でカレーを作る日」がやってきた。五月の連休に孫一家が帰省してくるのだ。孫に美味しいカレーを味わってもらい、喜ぶ顔を見て、また度々帰ってきていほしいとの一念である。つくづく思うが、孫への愛は本当に無償の愛だと思う。
  ところで、料理はどこまで自作で行くか、どの部分は購入したもので済ませるかの線引きが大事だと思う。オールオリジナルだと時間と手間と費用が膨大となりすぎる。今回ルーは好みのものを購入した。ヱスビー食品のゴールデンカレーである。家内も愛用している、好きな商品である。その会社のレシピを検索すると、食材(人参、玉ねぎ、ジャガイモ、牛肉、3種の香味料、ルー、水)は種類・分量ともきっちり指示を守れとある。
  まず、野菜切りから入った。切りの大きさも守れとレシピは言う。切った所で、調理用スケールが見つからない。ニトリに走った。999円で買えた。往復の時間を無駄にすまいと、3種の野菜のカットは薄い塩水に浸けておいた。アク抜きである。そして、おもむろに、赤身の牛もも肉400グラムを炒める。やや焦げ目が見えるあたりまでやれとの指示である。傍らにはiPadを置いて首っ引きでの参照である。そして、炒めた肉は皿に取り出す。それから最初の香味料クミンをオリーブ油(大さじ二杯)と一緒のフライパンへ投入した。クミンを炒めるのではない、クミンの風味をオイルに移すのである。クミンから泡が出るまで待てとレシピは言う。そこへ、野菜を投入する。順番は、玉ねぎ、人参、ジャガイモの順である。よく炒める。そして、ついに炒めて取り置いた肉を合流させる。よくかき混ぜながら、玉ねぎは透き通るまで、人参は表面にツヤが出るまでとある。それに、水1400ミリリットルを加えて煮始める。火加減まで指示がある。途中で香味料ローレル2枚を入れる。手間を惜しまずアクを取れとあったが、100均で買った落し蓋を使った。一旦火を止めてルーを入れる。もちろん指定量である。そして、よく溶かす。最後に、弱火でとろみが出るまで煮込む。火を止めて香辛料ガラムマサラを振りかける。これで、仕上がり。疲れた。ニトリ往復を入れて4時間の仕事であった。
  これを書いていると実際の調理と同じくらい疲れた。ここにも、楽勝はない。でも、客人たちには大好評であった。 (終)

2025年5月9日 発行

 

 

 

TEC予備校へのお問い合わせ

お電話にて

メールフォームへ(24時間受け付けております)

お問い合わせ 時間割や料金がわかる資料を無料でお送りします。