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25/05/22

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第51回】「プリザーブ苺ジャムを作ってみた…」

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 今回号はまたもや料理である。シンプルなものにチャレンジしたかったので苺ジャムを選んだ。それも苺の原形を残すプリザーブジャムにした。透明に近い紅色の液体の中に強烈に赤い固形苺が佇むジャムに子供のころから憧れていたからである。というのは、幼少の頃、自分にとっては眩いほど大都会である新町アーケード街に出かけた時のことである。とある洋菓子屋さんのショーケースで、このプリザーブ苺ジャムに魅せられてしまった。
  なぜ魅せられたかと言うと、魅力的なものが好きな子供であったからだと思う。特に、色彩には興味があり絵を描くのが大好きであった。とにかく、あの赤いプリザーブ苺ジャムにはよほど感動したのかショーケース前でしばらく立ち竦んでいたのを記憶している。その頃には言語表現は無理であったが、大人の現在の言語で表現してみよう。つまり、「美味しそうと、美しいと、官能的な」が合体したとてつもない代物であった。幼少の田舎から大都会に出てきた幼少の私にとっては…。
  前置きが長々と続いたが、要するに、ただの思い付きで苺ジャムを作ったのではない、と言いたかったのである。前号でも書いたが、料理学び初心者の私は「守・破・離」ステップの「守」レベルにあることをわきまえている。なので、今回もグーグルでレシピを検索することから始めた。いつものように多種のレシピが出てくる。その中で、過剰に手間がかからないが基本に忠実で見映えに拘ったレシピに従うことにした。女性の料理研究家のものである。特に、レシピを追う毎の写真が見やすく鮮明で美しかったのが気に入った。
  まず、材料は苺2パック500グラム、グラニュー糖300グラム、それにレモンのしぼり汁大さじ一杯であった。うわっ、砂糖多いなと思ったが、「守」を守った。美味しいもの、美しいものが必ずしも健康に良いとは限らないのだ。
  苺を洗って水気をペーパータオルで拭き取った。面倒臭がるなと、言い聞かせながら…。次に包丁でヘタを落とした。レシピには芯の部分をしっかり取れ、とある。残ると、口当たりの悪いジャムになるとの注意があった。水分が出やすくなるよう苺本体をハーフカットした。切り終わったボウル内の苺に300グラムのグラニュー糖を盛大に降り掛けた。そして、レモン汁大さじ一杯を加えた。ちなみに、苺を煮た仕上げにレモン汁を加えるやり方もあるが、煮る前に加える方が苺の発色が鮮明になるとのことであった。色彩派の自分に従った。最後に。やわらかいヘラで苺全体にグラニュー糖をまぶした。ラップをかけて冷蔵庫で一晩寝かした。あるせっかちな料理人が冷蔵庫一晩を省略したら、苺味と砂糖味がバラバラのジャムに仕上がったそうである。レシピは守れ。
  翌朝、待ち遠しい気持ちを抑えながら冷蔵庫からひんやりとした苺ボウルを取り出した。グラニュー糖の浸透圧で水分がたっぷり出ていた。たっぷり出ているのが好ましい工程らしい。よかった。次に、苺果肉と水分を別の容器に分けた。先に、水分を鋳物ホーロー鍋でやや強めの中火にかけた。しばらく煮ると、白いアクが出てきた。お玉で丁寧に掬い取った。アク取りは仕上がりの味に関わるので丁寧に取った。煮込みは110度までとある、できれば温度計を使えとあるが、温度計はない。代わりに、泡が大粒になるまで煮込めとある。この臨界温度は低すぎても高すぎてもいけないそうである。大粒の泡の見極めは鮮明な写真がレシピに載っていたのでとても助かった。
  最後に、満を持して苺粒を投入する。火加減はやや弱めの中火にしてお玉でやさしくかき混ぜながら煮詰める。ここでもアクが出続けるので、取り続ける。手を抜いてはいけない。苺に透明感が出てきてとろみがついたら仕上がりだ。火を止める。そして冷やす。  真っ赤でつややかな苺ジャムが完成した。家族に試食してもらった。そのまま食べる者、パンに乗せる者、ヨーグルトにかける者、アイスクリームのトッピングにする者様々に食した。感想は合格であった。中には、「丁寧に作るとこんなに素材が生きるのか」との声もあった。 (終)

2025年5月22日 発行

 

 

 

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