
ついに、第51回衆院選が終わった。正直に言って、生涯でこれほど面白い選挙は経験したことがない。大中小様々な政党が独自の政策を引っ提げて全国を遊説して回る様子は下手なドラマを見るより遥かに面白い。「様々な政策を実行するに当たり、国民の信任を問わなくてはならない。与党が過半数を取れなければ、私は辞任する」と、高市早苗は自らの退路を断った。とにかく、彼女は勝負に出たのだ。この歌舞伎の見え切りに国民は魅せられてしまった。ここで、大方の流れは決まった。
さて、場面は昨夜の開票速報に戻る。最近の選挙速報はスタートの8時で各党のおおよその当選予想が出る。高市自民党は最少でも過半数233を超えている。最大では優に300超えである。多くの国民の予想通りである。全国各地を同志の応援に駆け付けた高市総裁の演説を聴こうと押し寄せた聴衆の数と熱気が如実に物語っている。友人・知人からLINEやインスタで会場の群衆と興奮の様子がリアルに伝わってきた。送信者は口々に「自民、300いくぞ」と語った。応援を受けている一区の仁木さんと二区の山口さんは嬉しそうであった。画面をみて、二人とも当選だなと確信した。
世の常であるが舞台が大きければ大きいほど勝者と敗者の明暗ははっきりと浮かぶ。速報を追うと、自民の「明」と立憲民主と公明が合流した中道の「暗」が、はっきりと見えてきた。中道の予想当選数は悲惨そのものである。結果は自民改選前198議席から、一気に316議席に跳躍した。中道は167から何と49議席まで墜落した。自民党本部の当選表示はどんどん当選の赤バラが増えていく。高市総裁が候補者名簿の上に次々と赤バラを飾る。敢えて冷静を装っているが、総裁は内心喜びではち切れんばかりだと想像した。反対に中道の選挙本部で待つ野田、斎藤の両共同代表はお通夜の面持ちであった。詳細に描写すれば、立憲民主からの野田氏はどん底の失望を何とか耐えている感じであった。対照的に公明からの斎藤氏は敢えて失望を大きく見せようとしていた。違いがある。
言うまでもなく、中道共同代表の二人の表情の差は少ないとは言え当選の中身から出ている。なけなしの49議席の内訳を見てみよう。公明系は候補者28人全員当選している。言葉は悪いが、28人全員をちゃっかりと比例名簿の一位に載せている。そりゃ、当選するわ。翻って、立民出身の前職144人は21人しか受かっていない。何と、7分の1まで爆下がりである。私も多くの選挙を見てきたが、ここまでの爆下がりは人生初である。悲劇の旧立憲議員は、多くが小選挙区に出ていた。ここは高市旋風が背中を押してくれる自民党議員がいる。勝てるはずがない。次から次へと討ち死にした。小選挙区が駄目なら比例区での復活を夢見ていたが、ここでも圧倒的高市人気で比例票は大半が自民党にかっさらわれた。
でも、救いと言えば救いなのが、野田代表は地元千葉14区で、99324票で当選を果たした。でも楽勝ではない。次点の自民の長野晴信氏が86061まで迫っていた。ちなみに、長野氏は比例で復活当選した。別の選挙区をみてみよう。宮城4区である。中道の幹事長の安住淳氏(64)の牙城である。過去10回連続当選している。常にドヤ顔で有名な男である。彼の因縁の対戦相手は自民党前回比例当選の森下千里(44)である。彼女は元レースクイーンである。安住氏は相手の前職を馬鹿にしていたようであるが、地道に地盤作りをした森下氏に敗れた。結構、大差である。森下124250票、安住78671票であった。自分が結構やばいことに気づく最終二日前まで、全国の同志の応援に駆け回っていた。危ないみたいと二日前に地元入りしたが時すでに遅し。そして、比例も駄目だった。気づくのが遅い。
開票は数字の世界である。数字が主役である。だが、私は別のものを見ている。顔である。特に眼である。野田氏の眼は選挙前から「どよーん」としていた。生気なしであった。多分、公明に嵌められたことにやっと気づいたのであろう。ところで、他の多くの政治家の眼は充血した眼である。自民の鈴木幹事長はあれだけ大勝しているのに、何か必死な、赤い涙眼であった。維新の吉村代表の眼も充血と涙の眼であった。選挙は政治家の戦であることを痛感した。
でも、一人だけ違う眼の人がいた。当選した同志の名簿上に赤バラを置く高市早苗である。目は赤くもなく涙もない。きれいなスッキリとした瞳であった。彼女のこの眼をみたのは初めてではない。昨年秋の総裁選に勝ったとき、そして苦難の末、総理の座を掴んだ時である。大勝負に出て勝ちを掴んだ時、女は美しく輝く。 (終)
2026年2月12日 発行


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