
徳島の道も大分涼しくなってきた。だから、四国八十八ヵ所巡りの歩き遍路が増えてきた。以前にも書いたが、日本人は車で巡る人が多いが、外国人は真面目に歩き遍路が多い。巡礼の旅の人々は皆真面目である。それぞれに真剣な目的や想いを抱いているからである。外国人と言っても、圧倒的にヨーロッパからの人が中心である。ヨーロッパを成立させている源流は、古代ギリシャの文化、古代ローマの技術、そして心の拠り所はキリスト教である。でも、そのキリスト教にどこか物足りなさを感じ始めているようである。道端や道の駅で出会ったヨーロッパの遍路は「無常」と言う教えに惹かれると呟く。
このようにして、彼らの悩みを聞くうちに純粋に宗教心から「物足りなさ」を感じているのではないことに気付く。やはり、日々の生活や仕事、そして人間関係に悩んでいるのが分かる。私に悩みがある時、また人から悩みを相談されたとき、一旦悩みの基本に立ち返っている。古今東西、悩みの基本形は三つに集約される――①金(かね)の悩み②健康の悩み③人間関係の悩みの三つである。一般ヨーロッパ人は金(かね)に悩んでいる。
念のために言うと、四国へ遍路旅に来ているヨーロッパ人は一般の人々ではない。頭もよく、高学歴で、仕事でも成功しているお金持ちである。生活に困窮して暴動を起こしているのは別の人々である。遍路旅の裕福な人々は決して暴動を起こす人々を、良くないことだと言いながらも同情の心も十分にもっている。
暴動に参加している人たちをYouTubeで見ると生活が大変なことが分かる。欧州暴動の原点となったフランスであるが、物価はかなり高いそうである。税金も高い、社会保険料も高いので手取りは日本以上に低い。おまけに、物価は爆上がり、家賃はまた高い。水道、光熱費もぐんぐん高騰している。フランスの各地に住む日本人からYouTubeのスーパーマーケット値段レポートを見るが、日本より大分高い。併せて、現地のフランス人に物価インタビューをすると「毎月のやりくりにヒーヒー言っている」と嘆く映像が出ている。今では、何処の先進国でも悪者扱いされている移民の人々も大変そうである。不利な社会的立場で、多分子沢山な家庭維持は並大抵でないことは容易に想像できる。移民も暴動の一部であると報道されているが、やむを得ないかな…と。
ところで、四国中央市にクルマ友達がいる。人柄がよく人を招くのが好きな人だ。彼の近所にピザの人気店がある。出されるものが美味しいのと、店を切り盛りするイタリア人店主と日本人の奥さんの明るく親しみやすい人柄が良いのが合わさって、人気店なのはよくわかる。店内に入るとイタリアに行った気分になれる。奥さんはメイク効果もあってイタリア人に見える。彼らはロンドンで知り合った。同じ会社で働いた。そこで結婚して子供も出来た。税金は高いが、国からの子育て援助の類は一切なかった、と言う。こりゃ駄目だと、主人の故郷の町(名前は聞きそびれた)に居を移した。そこでも、高い税金だけでリターン(子育て援助)は皆無だったという。「イタリアは政府もお金ないから仕方ないよ」と主人が国を庇う。そこで、夫婦で相談したり嫁の故郷の四国中央市に子育て支援の内容を問い合わせたりして日本での子育て生活を決めた。明るく、楽しく、たくましい国際カップルである。彼らとの会話を挟みながらピザを食べていると、小学生の姉弟が帰ってきた。二人とも愛くるしい美形子供である。子供は夢がある。
話しは再びヨーロッパの暴動に戻る。若者たちは「政府は若者を見切った」と悲しそうに呟く。「人口が多い老齢層は粗末にすると選挙の票が入らないので、若者から吸い上げて老人に配る」やり方さ、と罵る。事実である。人口ピラミッドで高齢者が厚い国々は遍く(あまねく)この図式である。日本も同じである。TECの近所で働く若者は「高い社会保険料引かれてますけど、僕らがその年になった時には完全に見切られるでしょうね」とうつろに呟く。そんなことないですよとは、とても言えなかった。悲しい。
最後に、遍路巡礼のヨーロッパ人との会話シーンに戻る。オランダから来たカップルが言う「日本も少し遅れて暴動は起きますよ」。そこへ香港からの若い男性が異論を出した。「僕たち中国人とは違って、日本人は我慢強いですから、生活を落として落として耐えるんじゃないかな。暴動で抗議することさえ閃かないかも」と持論を述べた。
会話を締めくくるように、彼ら外国人巡礼を前にこう言った。私たち日本人、政治に関心を持ちます。選挙に行きます。と言って彼らを見回した。拍手が起きた。 (終)
2026年11月5日 発行


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