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26/03/13

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第72回】「電気自動車買った方がいいですか…」

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 知人から自動車購入の相談がよくある。車の説明は割と難しい。説明役のこちらの力不足もあるが、質問者も家を買うのに次ぐ金額の買い物なので期待と不安が混じり合った興奮状態にあるからである。大金をかけて買うのでいい車を買いたい、悪いものを選んで失敗はしたくない、と思っている。お気持ちはよくわかる。だが、こちらまで感化を受けて興奮してはいけない。
 それでは、相談実例に沿って話してみよう。相談者はこう切り出す――「時代は電気でしょう。家族とも相談しましたが、そろそろ電気自動車デビューかなということになりまして。何かいい電気の車ありますか?」。この問いを受けて、すでに気に入った車はありますかと問う。まず、車種を絞り込んで話を勧めた方が手っ取り早い。それから、自宅には太陽光発電があるか否かも確かめる。自宅のエネルギー体制はオール電化になっているかも確かめたい。主として、誰がよく使うのか。通勤に毎日利用するか週末のお買い物中心なのか、さらには遠出を頻繁にするのか、など希望と使用条件を聞き出す。
 正直に言うと、この手の相談を受けるのは案外難しい。相手は少々興奮気味であるので、彼・彼女の思うペースで話してもらうのが親切である。が、購入を取り巻く希望や諸条件は早いうちに聴きとっておきたい。さもなければ、時間効率の悪い相談になってしまう。とにかく、相手の目線に早い目に立つことが、満足いく相談結果にテキパキ辿り着くコツである。また、大きすぎる話や使ってみるまで分からない細かい話はサラッと受け流さねばならない。何事にも加減とタイミングが大事である。
 では、簡単な基礎知識。実は、電気自動車と言っても4種類ある。まず、一つ目のハイブリッド車(HV)はガソリンエンジンと電気モーター(当然、電池も)の二本立てである。有名どころではプリウス。走行はモーターだけでも可能、ガソリンだけでも可能、また加速時など両方使う場合もある。切り替えは手動でもできるが多くはコンピュータがやってくれる。知っておくべきは、ハイブリッドのエネルギー源はガソリンだけである。モーターを回す電気はガソリンを炊いて電池に貯めたものである。
 なんだ、元は結局ガソリンかとがっかりする環境論者にはもう少し手の込んだ二つ目のプラグイン・ハイブリッド車(PHV)がある。先ほどのプリウスの上級版にこれがある。こちらの強みは外部電源からの充電を受け付けることにある。ゆっくりの普通充電なら家庭でもすぐにできる。速い急速充電は外出先の専用充電器のお世話になる。言うまでもなく、搭載のガソリンエンジンから充電することも可能である。
 三つ目は、日産の得意とする「e-Power」である。こちらもガソリンエンジンとモーターの二本立てである。しかし、こちらは車輪を回すのはモーターだけである。エンジンは何をするの?と聞かれば、電気を作って電池に充電することに徹していると答える。重い車を駆動する力仕事は100%モーターに任せている。エンジンは燃費の良い回転域だけで回すのが強みだ。
 四つ目は、純粋な電気自動車(BEV)である。こちらにはガソリンエンジンは搭載されていない。外部から充電した電気でモーターを回して走る。モーターの強みは排気ガスが出ない、いわゆるゼロエミッションである。弱みは、車両価格が高いことである。実体験では、同じメーカーの同じモデルをエンジン車と電気自動車で順番に買うことになった。研究のためではない。偶然、用途があっての購入である。税金等諸費用込みのいわゆる「乗り出し価格」は前者が251万円、後者が350万円であった。止むを得ない用途があっての購入とはいえ、軽(自動車)が350万かよ、と唸った。
 実は相談のあった方は、四番目の純粋電気自動車を買うことになった。幸いにも、彼女の希望と使用条件にぴったりであったからだ。連れ合いの主人は私のクルマ友達である。正直に言うと彼女は主人のスポーツ車の猛々しい音を永年嫌っていた。従って、ほぼ無音の電気自動車に出会って一目惚れしたのだ。それに相談を進めるに当たって、家には太陽光発電があり、安く充電できることが分かった。その上、彼女は煩わしく感じていた給油には出向かなくてもよくなった。電気車の不安材料である遠出はご主人のガソリン車で済まし、電気車はもっぱらお買い物など近距離の用途中心であることから、電気自動車にドンピシャのユーザーであった。
 つい先日、この夫妻に会った。「相談に乗っていただいて、いい車に巡り会いました。とても気に入っています」とお礼を言われた。よかった。本当のところ、すべての相談がこんな風に終わることをいつも願っている。(終)

2026年3月12日 発行

 

 

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