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26/04/21

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第73回】「初めてフェラーリに乗った感想…」

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 実は1年ほど前のことである。初めてフェラーリに乗った。四国の高速でかなりの距離を走った。120kmほど走った。自分の車ではない。親切で寛容な友人のフェラーリである。色はフェラーリレッド、目立つこと目立つこと、半端ないスーパーカーである。
 昨年の春である。連休中なので高速も人出は多い。朝九時ごろ川内のコンビニで待ち合わせて、店員も忙しそうであるが、フェラーリの登場に勘づいたのか、一瞬一目見ようと表に出てきた。もっと自由な立場の客たちは、ほぼ一人残らず足を止めて暫し眺めてから入店していく。全方位的に視線を浴びて、「おぉ…これがフェラーリに乗るということか」と感動した。
 ダッシュで徳島インターチェンジに乗った。600馬力を超えたパワーなので、スタートダッシュは凄いの一言である。楽しいとも言えるが、如何せんオプション込みで4000万円の車輛個体なので凄く緊張する。不注意で事故を起こしたりすると一大事である。とにかく、注意を怠ってはならないと自らに言い聞かせた。加速は強烈である。前を見なければいけないので、スピードメーターを見る余裕はないが示す数字も凄いはずだ。私たちは下り車線を上板方面に走っているが、上り車線で徳島へ向かう車のドライバーはほぼ全員がこちらを見ている。正直に目を見開いて、驚嘆の声を上げている(ようにみえる)。あらためて凄い車なんだと改めて実感する。
 日本では一番人気のあるMRのフェラーリである。Mはミッドエンジンを示し、ドライバーの背中の後ろに搭載されている。Rは後輪駆動を示す。現行のモデルがハイブリッド車であるのに対しフェラーリ最後の純エンジン車である。エンジン吹かすと「ワォオオォ……ン」と咆哮する。一言で言うとライオンの雄叫びである。オーナーの友人はこのライオンの咆哮が堪らないという。でも、私は周りの視線も凄いので少し恥ずかしくなってしまった。私は日本人である。でも、フェラーリ乗りの友人たちは「日本人を忘れろ」と言う。助言の意味は分かる。人目を気にして生きる日本人をフェラーリで吹っ切れということだ。
 少しフェラーリの迫力から距離を置いて、車好きの流派の解説をする。流派は五つに分かれる――①見せたい派②走り派③語り派④いじり派⑤クラシック派。余り解説は要らないと思うが、簡単に説明する。①見せたい派は、とにかく目立つのが好きである。走り去る自分のフェラーリを振り返ってみる人が多いと喜び興奮する質である。こんな男に美人の彼女ができたら、どこ構わず連れ回すタイプである。②走り派は、とにかく走って楽しむ方である。外観も素敵であるに越したことはないが、走ってコントロールして楽しむタイプである。走り派も二つに細分化できる。スピードやサーキットでのタイムを競うタイプと、華麗なコントロールを追及して走りの美、曲がりの美を追求するタイプである。スケートで言うと、スピードスケートとフィギュアの違いである。③語り派は、うんちくを語るのが好きである。ただの口だけの場合もあるが、製造会社の沿革やその創業者の生い立ちや苦労話など知識が豊富なクルマ界隈の学者先生である。悲運に見舞われ壮絶な事故死を遂げたレーサーを愛おしく語るロマンチストである。④いじり派は、車輛に改造を加えるのが好きである。大きくは二つに分かれる。外観をドレスアップするタイプと、内部のエンジンや脚回りに手を加えるタイプである。整備工場に入り浸ってエンジニアに手ほどきを受けるのが大好きである。ネット検索で世界中にある改良部品などの手配にやけに長けている。旧い車のパーツが無くて困っていたら彼らに助けを求めるとよい。⑤クラシック派は、とにもかくも、旧い車が好きである。最初期の六〇年前のポルシェがあるとの情報を聞きつけると日本中どころか、世界中駆け巡って探し出し、買い求めようとする。その熱意には圧倒される。旧い車は作った個人の情熱や愛情が凝縮されているので、魅せられたものにはたまらない魅力である。
 さて、もとの高速でのフェラーリ走行に戻ろう。徳島道を西へ西へと進み、川之江インターを高松道へと進んだ。相変わらず、周囲の視線は半端ない。子供が窓を開けて興奮気味にこちらへ何か叫んでいる。フェラーリは高速の華である。老若男女をすべて惹きつける。そういう意味ではすごい車である。でも、この地点で私は緊張と周囲からの視線にくたびれてしまった。渋滞停止中に友に「フェラーリ試乗を切り上げたい」と連絡した。
 私は②の走り派である。見せて、見られるのは苦手かも。(終)

2026年3月26日 発行

 

 

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