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23/08/19

校長古田茂樹の「車窓余禄」【第28回】「徳島が好きになる阿波踊り…」

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 一年ほど前であるが、TEC予備校のスタッフに「徳島が好きになる本」をひとり一冊ずつ配った。実は、知り合いの会社を訪問した折に偶然見つけて気に入った本である。緒言に「中・高校生や大学生をはじめ、徳島県に関心のある社会人に読んでもらいたい」と出版の目的が記されている。子供も大人も日ごろの忙しさに感(かま)けて、じっくり郷土のことを知らないまま過ごしているからである。
 TEC予備校では、「来る時代と適正のマッチング」を進路指導の肝にしている。何はともかく、生徒には自分の持前を生かした人生を歩んでほしいと心から願っている。そのためには、自分を知ることが大事である。しかし、自分はどんな人間だろうかと思案しても余計分からなくなるものである。別のアプローチとして、自分が生まれ、育んでもらった郷土を知ることから始めるのも一計かなと思い、「徳島が好きになる本」をまず先生が読み、授業や面談で中身に言及する作戦に出た。
 願わくば、そのうちに生徒の方からこの本に関心が湧いたら手に取ってもらいたい。高3になって志望理由書を書く段になってからでもよい。大学入試の面接では、自分自身のことに加えて郷土のことを加えて語ると内容に幅と深みが増すはずである。実は、県外の大学の先生と話していて「入試面接で、郷土のことを語れる受験生には好感をもつ」と聞いたことも生徒に進めたい理由である。
 ここからは、愛する郷土徳島のために辛口な話へと転じたい。2019年度都道府県GDPランキング43位、同年年間宿泊者数5年連続47位、2023年度都道府県魅力度ランキング41位、共通テスト徳島県全国順位43位…等、あらゆるデータが底辺を永年さまよっている。県外からの在住者に徳島の感想を聞くと、「自然が豊か、人々が明るい・親切、女性がしっかり者が多い…」等好印象を上げてもらえるが、しばらくして打ち解けると辛口なコメントが出てくる「交通ルールやマナーを守らない、男の人が頼りない、口先では言うが実行力が伴わない、金を出し渋る、人の悪口を言う人が多い…」等、当たっていなくもないが、なかなか耳が痛い。
 何か徳島県が自慢できるものはないのか。そうだ、阿波踊りがある。我ながら、阿波踊りは楽しいばかりか優美な伝統芸であると確信している。知人・友人や取引先でも県内の有名連で活躍している人々が少なくないが、あの踊りや鳴り物に打ち込む姿勢には感動させられる。仕事でも一流であり、阿波踊りの名手としての有名人もいる。控えめだが、人間の魅力がにじみ出ている。
 8月14日の夕刻南方面から徳島市へ帰路を急いでいた。この日は阿波踊り3日目であった。折しも台風7号が南海上から紀伊半島をめがけて北上していた。雨がだんだん強くなる。カーラジオのニュースが知らせた、「阿波踊り実行委員会は、今夜の阿波踊りは中止しないことを決めました」まさか、嘘だろと思ったが、ニュースを続いて聞くと間違いではなさそうである。委員会は表立っては表明しないが、チケットの払い戻しが大きくのしかかっていることが想像できる。彼らの事情も分からないでもないが、これからさらに強まる雨の中本当にやるのか…。ニュースは続く。「徳島市は市内全域に「災害警報レベル3」発令しました。市長は実施に反対に意向を表明している。」実行委員会は市の部署ではないか。それでも強行するのか、市のガバナンスはどうなっているんだ。驚きと当惑が交錯した。車を道脇に停めてlineを確認すると、line仲間からも同様に懸念するトークが上がっている。
 18日付け徳島新聞は「14日の踊り強行は判断の是非や経緯の検証が必要だ」と記事やコラム鳴潮で報じている。この件では、同社は完全な中立的報道機関とは言えない。これまでずっと阿波踊りには、事業として関わってきたからだ。
 最後に、様々あるが、世界一の踊りの祭典・阿波踊りを衰退させてはいけない。関係者、県民、我がこととしてこの伝統を守るべくあらゆる問題・課題を乗り越える取り組みをしたい。県の(多分、最後の)優越感を守らねば。各派の経緯、利害、立場は置こう。 (終)

 

2023年8月19日 発行  TEC TIMES 2023年9月号より

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